なつブログ

野球、アニメ、ゲームなど様々なことを思いつくまま書きます。不定期更新。

さようなら、あの時のブルックリン・ネッツ

 僕は19-20シーズンにNBAを中学時代ぶりに追い始めたが、コロナでシーズンが中断してからはまた見るのをやめていた。そんな僕が再びNBAを追い始めたきっかけは20-21シーズンに起きたブレイク・グリフィンのブルックリン・ネッツ入りである。

 

 僕の中学時代、ブレイク・グリフィンは豪快なダンクを武器にリーグNo. 1 PFの座を争っており、ロブシティと呼ばれたロサンゼルス・クリッパーズは人気の絶頂にあった。かく言う僕もまた偶然クリッパーズに魅せられた者だった。

 ある日、珍しくBSでNBAの試合を放送していた。2013年のことだったと思う。当時バスケ少年の僕はアメリカに凄いリーグがあること、マイケル・ジョーダンコービー・ブライアントの名前、それくらいしか知らなかった。そして僕はそのサンダーとの試合を目にした。

 記憶が朧げだが、サンダーにはKD、ラス、イバカがいて、クリッパーズにはCP3、ディアンドレ、そしてグリフィンがいた。中でもグリフィンのプレーは僕を釘付けにした。

 そして10年近くの月日が経ち、少年時代のヒーローが移籍するという記事を目にした。ピストンズに移籍したことは知っていたが、今度の移籍先は比較にならないくらい凄いらしい。僕の中学時代からスーパースターだったKD、ハーデン、そしてカイリーがチームを組んでいると言う。そこに僕のヒーローが加わるという。期待に胸が膨らんだ。

 そしてすぐに21年のプレーオフがやってきた。ボストンを難なく蹴散らしたネッツは、カンファレンス・セミファイナルで現役最強と名高いヤニスを擁するバックスと「事実上のファイナル」と呼ばれる熱戦を演じることになる。

 ネッツは早々にKD以外のBIG 3であるハーデン、カイリーを失い戦局は絶望的と言って良かった。だがネッツは果敢に立ち向かった。僕のヒーローはヤニスとマッチアップし、GAME 2ではバックスを85点に抑えての圧勝に貢献。その後もKDの人外そのものなオールラウンドな活躍と、ブルース・ブラウン、ジェフ・グリーン、そしてグリフィンらロール・プレイヤーの活躍により戦力差を覆してみせた。特にグリフィンがヤニス相手にポスタライズダンクをかました瞬間は興奮のあまり叫んでしまった。

 

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 しかしこのシリーズの主役はKDだった。この時のKDは2018年のレブロンなどに匹敵する化け物っぷりで、この瞬間彼は間違いなくヤニスをも超え地上最強と言って良かった。

 KDと言えば史上最悪のヒールだ。KDがウォリアーズに移籍した頃、僕はNBAを熱心に追っていなかったとは言え、あの決断には賛同できないし、今でもウォリアーズを憎たらしく思っている。しかしそんなイメージを一瞬で吹き飛ばすほど、このシリーズのKDは最高にクールだった。

 しかしGAME 7 のオーバータイムまで及んだ激戦の末ネッツは敗れ、その後バックスはチャンピオンになった。

 それでも僕の目には彼らが史上最もかっこいい敗者として映った。そして僕はグリフィンのファンというだけでなくネッツのファンになり、来季こそはチャンピオンに輝けると信じていた。このシリーズ、ハーデンとカイリーのいずれかの怪我がなければ、大不振のジョー・ハリスが1本でも3PTを決めていれば、そしてKDが GAME 7であと5cm手前でシュートを撃っていれば、勝っていたのはネッツだったのだから。

 

 しかしここからネッツの苦難が始まる。ファンとしても苦しい時期が丸一年続いた。ワクチン接種を拒否したカイリーの欠場に始まり、KDも長期離脱。その間一人で負担を担ったハーデンの不満は募り、チームとの間に不和が生まれ、ハーデンはTDLシクサーズに移籍。代わりに入ったスターPGのベン・シモンズはフィット自体はハーデンより良好と思われていたが、メンタルに爆弾を抱えた上、背中の故障で「〇〇までには復帰か」というニュースが流れるだけで結局シーズン全休。コンセプトが崩壊し

 

「これどんなチームなん?」

 

と言いたくなるラインナップになったネッツをトレードで入団したセスとドラモンドが助けてくれたことが唯一の幸いだった。

 そんなふうにゴタゴタし続けた21-22年シーズンは結局プレーイン・トーナメントを勝ち上がるも、プレーオフ1回戦で前年一蹴したセルティックスにスイープされる始末。第1戦をはじめ接戦は多かったが、誰の目にもチーム力の差は明らかだった。

 

 そしてこのオフ、NBAで話題の中心になったのはネッツだった。なんとKDまでもがトレード要求を行ったのである。ここに来て、僕はもう半ば諦めていた。

 コート上では現役トップ3クラスに頼りになるが、怪我が多く何より「バスライダー」気質のKD。

 

 ワクチンの件は理解できる面もあるので置いておくが、キャブズでもセルツでも自分のこだわりのためならフロントやチームのことなんてお構いなしだったカイリー。

 

 出場するかしないか常に煮え切らず、21年のプレーオフ以降スターとしての輝きを完全に喪失したシモンズ。

 

 あとどうにも無能な感が拭えないヘッドコーチのスティーブ・ナッシュ

 

こんな好き放題ばかりのチームで勝てるわけがない。この夏にグリフィンも移籍した。キャム・トーマス、クラクストンら応援したくなる若手は多いが、もう今の体制を諦めても良いだろうと思い始めていた。

 

 しかしここからネッツは再びファンの心を熱くする。結局KDは残留。そして日本人にとって最大のニュース、渡邊雄太の入団が起きた。

 渡邊のことは当然応援していた。僅かなプレータイムでも「自分にできることを」とハッスルを見せ、必要とされる選手になるために足掻く姿は本当に尊敬していた。だからこの移籍は本当に嬉しかった。でも当初は「応援していたチームに応援している選手が来た」という程度のものだった。

 

 だが2022年11月、開幕直後からケミストリーに欠け、不振に陥ったネッツはHCのナッシュの解雇を前後として大幅に変わり始める。それは、ともすれば21年シーズンのBIG 3さえ上回る強さだった。

 ジャック・ボーンHCの指揮の下、ネッツはKDを中心に見事なチームバスケットを完成させた。カイリーはくだらない理由でチームから出場停止を命じられていたが、そんなことはもはや関係ない。元々優秀なロールプレイヤーは揃っていたが、彼らが足並みを揃え、各々の役割を全力で全うした。特にクラクストンのディフェンダーとしての完全開花は目を見張るものがあった。

 その中で渡邊もケミストリーの中核としてチームに貢献し続けた。クラッチタイムで素晴らしいディフェンスを披露したかと思えば、3PTを沈めてチームの勝利を演出。ファンみんなに愛されるチームのハートになったのだ。

 

 日本人に不利なリーグで、何度も何度も辛酸を舐めてきた渡邊は、それでも諦めずキャンプ契約から本契約を勝ち取り、必要とされるために存在価値を証明し続けてきた。その結果、リーグで一番熱くて勢いがある素晴らしいチームの中心で、その好調の象徴としてみんなに愛されるようになった。こんなに嬉しいことがあるだろうか。ブレイザーズ戦での彼の活躍やインタビューを見た後、僕は思わず涙していた。今でもあの「渡邊のキャリアが報われた瞬間」を思うとすぐに泣いてしまう。

 渡邊は僕の目にはどんなスーパースターより輝いている。何度ポスタライズされたって恥なんて気にせず立ち向かい続ける姿、チームの勝利のためにエゴ一つなく常に全力100%で動き続ける姿、必要とされるために改善を続ける姿。全部が尊敬に値する勇姿だった。

 そして彼をリスペクトするコーチやチームメイトもまた、リスペクトに値する人々であり、ネッツはこの期間NBAで一番「チーム」だったと思う。その結果が12連勝だった。

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僕は今でもこの写真が大好きだ。この時のネッツはロブシティさえ超えて、僕が一番好きなチームかもしれない。1年間、チームですらなかったネッツはようやく「チーム」になったのだ。この興奮は何事にも優った。

 

 しかし2023年2月、僕の夢は終わった。カイリー・アービングという人間一人のエゴによって。端的に説明すれば、前年オフに長期契約を渋られたカイリーが「どうせオフには出て行くぞ」とトレードを要求したのだ。

 これまでチームに迷惑しかかけてこなかった男が何をほざいているのだという不満はさておいて、オフの移籍自体は選手に認められる権利だ。だから認めるほかない。だが散々迷惑をかけたチームがようやく立ち直ったタイミングで、KDの離脱中に、キャブズとセルツに続いて今度もまた期待に応えず移籍を選択する。その事実を以て彼をリスペクトできるはずがなかった。

 

 しかし今更不満を垂れても結果は変わらない。カイリーはトレードされた。しかしKDが故障から帰って来れば、今のロスターでも十二分に優勝は狙える。少なくともカンファレンス・ファイナルは狙える。連勝中だってカイリーがいない時期はあった。

 だがそれでもKDはチームと話し合った末にサンズ移籍を選んだ。「結局お前はバスライダーなのか」という失望や、「ミカルとジョンソンが抜けたサンズより今のネッツの方がケミストリー的にも優勝が狙えるのではないか」という疑問がないではなかった。だが、今更KDを責める気にはならなかった。もう疲れたというのもそうだし、何よりカイリーと違い21年のプレーオフをはじめ多くの場面でKDはチームリーダーとして貢献してくれていた。だから祝いも貶しもせず、エースの門出を見送ることにしたのだ。

 

 その後のネッツ、今のネッツについて僕は何と語っていいかわからない。もちろん勝てば嬉しいが、前ほどではない。これからも絶対に応援し続けるが渡邊の活躍の機会も大幅に減った。

 僕はまだ完全に割り切れてはいないし、今でも12月のネッツなら優勝できたと信じて疑っていない。それでも二度とあのチームは戻ってこないという喪失感故に筆を取ったというわけだ。

 

長くなってしまったが最後に。

 

僕はあの時の、KDがいたブルックリン・ネッツが大好きだった。不揃いのスーパースター軍団が苦労人のロールプレイヤーたちの加入によってリーグで一番熱いチームになる過程に胸を焦がした。

その事実だけは一生変わらない。

さようなら、あの時のブルックリン・ネッツ