【NBA】あの年のMVPは誰が受賞すべきだった?21世紀のMVPを再選出しよう(前編)
こんにちは、なつです。突然ですが、貴方はこんな言葉を見たり聞いたことはないでしょうか。
「2006年のMVPはスティーブ・ナッシュでなくコービー・ブライアントが受賞するべきだった」
未だに時折、特にコービーの死後にTwitter等で見かける言説ですね。この言葉の真偽を確かめるべく調べ始めたことをきっかけに、各年のMVP投票を振り返り、本当に相応しい選手は誰だったのかという検証を始めました。
ということで今回はタイトルの通り、21世紀のMVP投票を振り返り、独断で個人的にMVPを受賞すべきだった選手を並べていきます。
まず最初にハッキリさせる必要があるのが、MVPの選出基準です。実際の投票に際しても、「何をもってMVPとして評価するか」は毎年ファンが議論する難題ではあります。まず第一にバスケットボールという競技が、プレースタイルに富んでおり、画一的な評価基準(野球でいうWARのようなもの)を打ち出すことが難しい。その上、わずか5人しかコートにおらず、競技の性質上、他の選手の出来不出来に大きく影響を受ける点がより評価を難しくしているのでしょう。
そんな中で、今回評価基準とするのはまずベーシックなスタッツ、所謂ボックススコア。得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロック、ターンオーバー、各種シュート効率などですね。こちらは一応評価基準に入れますが、今回は比較的優先順位の低い項目とします。
そしてチームの勝利数。野球では試合に関わる人数が多く、特筆すべき成績を残した選手がいるチームが弱いことがザラにあるためなのか、近年は勝利数が特に重視されていません(マイク・トラウトが好例ですかね)。
しかし、バスケットボールではコートに出場するのが常に5人と少人数であり、レギュラークラスともなると48分中75%にあたる36分出場することもよくあるため、相変わらず勝敗も選手1人で一定コントロールできるという見方がされているような気がします。ということで、勝利数も評価基準です。
しかし、単純な勝利数比較では見えない事情もあるため、2ndオプションの実力や、周囲の選手の健康状態などのチーム状況も考慮します。
そして参考にするアドバンスドスタッツがPER、WS、BPM、VORPの4つです。それぞれの説明は省きますが、アドバンスドスタッツの中ではメジャーな部類の4つを選択しました。それぞれに大いに欠点はありますが(例えばPERはかなりビッグマン有利になっています)、複数並べて見比べることで見えてくることもあるということで、参考とします。
最後に、実際のMVP投票に関して大きな影響を与える「ストーリー性」。例えば、2017年のラッセル・ウェストブルックにとって「KDに裏切られたこと」、2011年のデリック・ローズにとっての「史上最年少の冠」などが分かりやすいですね。こちらについては今回は基本的に加味せず、Most Valuable Playerの言葉通り純粋に「最も価値が高い選手」を選出することとします。
2017年のラスについて言えば、「周りにスターがいない中チームを牽引した」という事実は評価しますが、KDの「裏切り」にあったことや、それでもフランチャイズに尽くしたこと自体を過度に評価することはしません。
あとここまで言い忘れてましたが、MVP投票はレギュラーシーズンを評価してのものなので、プレーオフは「一切」評価に含めません。
前提が長くなりましたが、2024年から順に振り返っていきましょう。
2024
本来の受賞者:ニコラ・ヨキッチ
つい半年前まで行われていた2023-24のレギュラーシーズン。MVP投票の上位3人、ニコラ・ヨキッチ、シェイ・ギルジャス・アレクサンダー、ルカ・ドンチッチが順当に今回もMVP候補として挙げられます…が、わざわざスタッツを並べるまでもなく
「まぁ……ヨキッチでよくね?」
ってなるんですよね。
まずスタッツを見ると、3人とも凄まじいですが、特に得点王のルカが目を惹きます。
しかし次に勝利数に目を向けると、SGAのOKCが57勝、ヨキッチのDENが57勝、ルカのDALが50勝とDALが一歩引けを取ります。
そして最後にアドバンスドスタッツを見ると…ヨキッチが全項目で1位です。余談になりますけど、ヨキッチは過去4年、先述の4つのアドバンスドスタッツ全てでリーグ1位ですし、なんなら指標によっては歴代でもトップの成績を残しています。
勝利数も1位タイ、アドバンスドスタッツを総なめ。特に文句なくヨキッチで良いと思います。
今回の選出:ニコラ・ヨキッチ
2023
本来の受賞者:ジョエル・エンビード
さて、近年では比較的議論されているMVPがこちら。主な候補は先述のヨキッチですね。まずは2人のスタッツを並べましょう。なお上段左から順に得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロック。そして下段がFG %、3pt %、FT %です。
ジョエル・エンビード(PHI)
33.1/10.2/4.2/1.0/1.7
.548/.330/.857
ニコラ・ヨキッチ(DEN)
24.5/11.8/9.8/1.3/0.7
.632/.383/.822
得点王のエンビードに、センターながらほぼシーズントリプルダブルのヨキッチ。それぞれの特徴がよく現れたスタッツです。スタイルがまるで違うので、単純比較は難しいですね。
続いてチームの勝利数及びチーム状況ですが、PHIの54勝に対しDENが53勝と大差なし。
チーム状況ですが、PHIは2ndオプションのジェームズ・ハーデンが58試合と欠場がやや気になります。
DENはローテーションの主要メンバーは大体60試合ちょっとの出場であり、70試合以上出た選手はほぼいない代わりに、極端に欠場した選手もいません。2ndオプションの実力自体はPHIの方が上ですが、ハーデンの欠場を鑑みると、こちらについてはDENの方が少し恵まれているかも?
最後にアドバンスドスタッツですが、左からPER、WS、BPM、VORPの順です。
エンビード
31.4/12.3/9.2/6.4
ヨキッチ
31.5/14.9/13.0/8.8
PER以外は「圧勝」と言っても差し支えないレベルでヨキッチの方が上です。調べるまで、ここまで差が出るとは思っていませんでした。
全てを踏まえた結論ですが、今回はヨキッチを選出します。全てのアドバンスドスタッツでヨキッチが上回っている点を評価したいです。ロスター全体を見ると、ややヨキッチの方が恵まれているような気がしますが、それを差し引いても圧倒的な数字ですし。(そもそもマレーのようにヨキッチの隣にいるからこそ評価を上げている選手も一定数います)
ということで早速本来の選出とは違う結果となりました。
今回の選出:ニコラ・ヨキッチ
2022
2021
本来の受賞者:ニコラ・ヨキッチ
2年まとめて言いますけど、他に候補いる?一応MVP投票2位はこの2年もエンビードですけど。
マレー、MPJという2番手、3番手が多くの試合を欠場する中、チームを21年に47勝(短縮シーズンだったので82試合換算で54勝程度)、22年48勝に導いた、この2年のヨキッチの貢献は凄まじいものです。
22年はエンビードもハーデンを獲得するTDLまでベン・シモンズの欠場に苦しめられていたわけですが、タイリース・マクシーの思わぬブレークなどを見ると、さすがにシーズンのほとんどをマレー、MPJの飛車角落ちで戦ったヨキッチよりはマシだと思います。
ちなみに22年は上記4つのアドバンスドスタッツでヤニス・アデトクンボが2位ですが、前年である21年の優勝メンバーがシーズンのほとんどを健康で過ごしながら、PHIと同じ51勝に落ち着いたあたりで票を逃したのでしょう。
2020年
本来の受賞者:ヤニス・アデトクンボ

この年の対抗馬はHOUのジェームズ・ハーデンとLALのレブロン・ジェームズ。取り分け、ハーデンが対抗馬になります。(レブロンは勝率、アドバンスドスタッツで共にヤニスより下のため除外します)
まずはスタッツ比較。
ヤニス(MIL)
29.5/13.6/5.6/1.0/1.0
.553/.304/.633
ハーデン(HOU)
34.3/6.6/7.5/1.8/0.9
.444/.355/.865
ヤニスは出場時間僅か30分でこの記録を残し、かつDPOYまで受賞しています。得点王のハーデンは如何にも全盛期ハーデンらしい成績です。
次にチーム状況です。コロナ禍の影響で短縮シーズンとなり、全試合数が73試合ですが、MILは56勝で東の1位。HOUは44勝で西の4位。これこそが、ハーデンが1位票を1票も得られず、MVP投票3位に終わった理由の最たるものです。このシーズンのHOUはカペラの欠場などもあり、リーグ8位の勝利数で終わりました。
続いてアドバンスドスタッツ。
ヤニス(MIL)
31.9/11.1/11.5/6.6
ハーデン(HOU)
29.1/13.1/9.6/7.3
ものによってはハーデンが勝っていたり、かなり拮抗しています。各指標ごとの特徴が垣間見えます。
総評に移りますが、その前にマイク・ダントーニがハーデンを中心に構築したシステムの特徴について話す必要があります。
ハーデンのUSG %(概ね「ボールを占有している割合」という意味です)は、ダントーニのHC就任以前のHOUでの4年で30%程度だったものが、彼の就任以降36.5%にまで上昇しています。このことから分かる通り、彼のシステムではハーデンにボールを集めており、(私にそこまで戦術理解度がないので)詳細は省きますが極端なまでに彼を中心に作られています。
つまり、他のスターよりスタッツが稼ぎやすい環境であり、その分アドバンスドスタッツも高くなりやすいんですよね。これが即ち「ハーデンはシステムのおかげでスタッツ稼ぎをしているだけの大したことない選手」とならないことには注意が必要です。
そもそもこのシステムは、ハーデンの歴代屈指のオフェンス能力があればこそ実現しており、何より事実としてチームを西の上位に押し上げた実績があります。いくらボールを独占しようが、多少FGの効率が悪かろうが、結局勝ってさえいれば問題ないわけです。
で、話は翻って2020年、なんなら2019年についても同様ですが、この2年のHOUは決して悪くないながら、リーグ最強クラスというだけの戦績を残していません。一方のMILは両年ともリーグ1位の勝率です。
アドバンスドスタッツに大差がなく、なんなら6分ほど少ない出場時間でそれを記録しているヤニスが本来の投票通り適格でしょう。(ちなみにBPMは出場時間に関係なく、VORPは出場時間に対応していたはずです)
今回の選出:ヤニス・アデトクンボ
2019年
本来の受賞者:ヤニス・アデトクンボ
この年も候補者はヤニスとハーデンの2人、なんなら2020年より競ってはいるのですが、これも同じ理由でヤニスが適格だと思います。
一応アドバンスドスタッツは
ヤニス(MIL)
30.9/14.4/10.4/7.4
ハーデン(HOU)
30.6/15.2/11.0/9.3
と2020年以上にハーデン有利であり、特にVORPで1.9と顕著な差があります。
しかしVORPだけを優先して評価するのも微妙ですし、60勝と53勝という勝率の差を鑑みて今回はヤニスで。
今回の選出:ヤニス・アデトクンボ
2018年
本来の受賞者:ジェームズ・ハーデン
この年の対抗馬はレブロン(CLE)とアンソニー・デイビス(NOP)です。が、勝率(HOUはリーグ最高の65勝)で見てもアドバンスドスタッツで見ても、ほぼハーデン一択で良いと思います。(一応VORPはレブロンがハーデンに0.5の差をつける8.2でリーグ1位です)
今回の選出:ジェームズ・ハーデン
2017年
本来の受賞者:ラッセル・ウェストブルック

この年は受賞者のラス(OKC)と、またもやハーデン、そしてカワイ・レナード(SAS)が候補です。
まずスタッツですが、言わずと知れた通り、ラスはこの年自身初(NBA史上2回目)のシーズン平均トリプルダブルを達成しています。
ラス(OKC)
31.6/10.7/10.4/1.6/0.4
.425/.343/.845
ハーデン(HOU)
29.1/8.1/11.2/1.5/0.5
.440/.347/847
カワイ(SAS)
25.5/5.8/3.5/1.8/0.7
.485/.380/.880
ハーデンもなかなかえげつない数字を残してアシスト王に輝いており、ここだけ見ると普通なカワイも表面的なスタッツに残らない守備面の貢献があるため侮れません。
続いてチーム状況ですが、OKCはオフにケビン・デュラントにFAで逃げられた影響で惨憺たる戦力でしたが、ラスの活躍で47勝を挙げました。HOUはそれなりの充実度で55勝、SASは万全の戦力で61勝を挙げました。
続いてアドバンスドスタッツ。
ラス
30.6/13.1/11.1/9.3
ハーデン
27.4/15.0/8.7/8.0
カワイ
27.6/13.6/9.4/7.1
ボックススコアに大きく影響を受けるPER、BPM、VORPではリーグ1位のラスがぶっちぎり。一方WSではハーデンがトップです。実は意外とPERとBPMではカワイの方がハーデンより上だったりします。
総評ですが、効率は悪いがとにかく個人成績が凄まじいラス、チーム成績と効率のカワイ、そしてその中間くらいのハーデン、といった印象です。
効率面や勝率の悪さを加味して尚、「KDに裏切られたチームを牽引した」というストーリー性を抜きにしても、やはり通常のスタッツ、そしてアドバンスドスタッツの傑出度を見て、ラスを選出します。
今回の選出:ラッセル・ウェストブルック
2016
本来の受賞者:ステフィン・カリー
史上初(まぁ、本来なら2000年のシャックか、2013年のレブロンあたりがそうなるべきでしたが)の満票MVP。歴代最高勝率と、ずば抜けたスタッツ及びアドバンスドスタッツ。他に候補はいません。
今回の選出:ステフィン・カリー
2015
本来の受賞者:ステフィン・カリー

彼にとって自身初のMVPシーズン。GSW王朝が開幕した年でもあります。この年の対抗馬は最早お馴染みのハーデン。
チーム状況はGSWがリーグ最高の67勝に対し、ハーデンのHOUが56勝。タレントとしてはGSWの方が揃っています。
続いてアドバンスドスタッツ。
カリー(GSW)
28.0/15.7/9.9/7.9
ハーデン(HOU)
26.7/16.4/8.8/8.1
WS、VORPでは僅かにハーデンがリードしているという意外な結果に。とは言え、チームとしての成功を覆すほどのものではないかという印象です。すっ飛ばした通常のスタッツでも平均得点こそハーデンが上ですが、効率はカリーの方が上ですし。
そんなわけで実際の投票通りカリーを選出。効率が素晴らしいとは言え23.8得点7.7アシストとパッと見MVPとしては物足りない成績ですが、この年はレブロンがレブロンにしては低調だったり、前年MVPのKDが故障していたりしたのも大きそうです。
今回の選出:ステフィン・カリー
2014
本来の受賞者:ケビン・デュラント
相棒のラスがシーズンの半分以上を欠場する中、歴代屈指のパフォーマンスでチームを牽引したKDが受賞。この年はアドバンスドスタッツでも頭抜けており、文句なしの受賞と言えるでしょう。
今回の選出:ケビン・デュラント
2013
本来の受賞者:レブロン・ジェームズ
全盛期レブロンの恐ろしいところは、彼のMVPシーズンにほぼまともな対抗馬がいないところ。この年は50-40-90を達成し歴史的シーズンを送ったKDがいますが、そんな彼でさえあらゆる指標で「2位」を総なめするにとどまっています。
そんなわけで、史上初(あるいは2000年のシャックに次ぐ2度目)の満票MVPとなるはずだったこの年はレブロン一択です。なおカーメロに1票入れたドアホがいた模様。
今回の選出:レブロン・ジェームズ
総括
と言うことでまずは、直近12年を振り返りました。実際の投票結果と違う選出は23年(エンビード→ヨキッチ)だけという結果に。割と最近の投票は、アドバンスドスタッツで見ても妥当なことが多いという少し意外な真実が明らかになりました。
なるべくなら投票当時と違う観点で選出したかっただけに、早速躓いた形になりました。
しかしご心配なく。後半戦(2001〜2012年)は結構、実際の投票と違う結果になりました。
それでは、後半でまたお会いしましょう。