【NBA】ペリカンズのセンター問題を考えようの会
お疲れ様です。なつです。今回は単発で、ニューオーリンズ・ペリカンズのセンター問題について考えていきます。なんでNBAに関する話題で企画以外で最初の単発記事が、ファンでもなんでもないNOPの話題なのかは謎です。なんか一番手頃な話題だったんですよね。
昨季、ニューオーリンズ・ホーネッツ時代のクリス・ポール退団以降では、最高勝率となる49勝33敗(.598)を挙げたペリカンズ(以下NOP)。プレーオフでは、エースであるザイオン・ウィリアムソンを欠き、OKC相手に呆気なくスイープされて終戦。
OKCやMINといったチームが大幅に勝率を伸ばしたこともあり、「飛躍」というような印象は全くありませんが、それでも安定してプレーオフに出場するコンテンダーチームになるための足掛かりを掴んだシーズンと言えるでしょう。
そんなNOPはこの夏にトレード市場の目玉であったデジョンテ・マレーをATLから獲得。対価はDFに優れるもプレータイムを確保できなかった若手PGのダイソン・ダニエルズ、ベテランフォワードのラリー・ナンスJr.、入団から2年ほぼプレーしていないEJ・リデル。そして25年と27年の1巡目指名権。25年はLALの指名権、27年はNOPとMILのうち順位が低いものであり、後者にはトップ4プロテクトがかかっています。
昨季までのNOPは正規ポジションがSGのCJ・マッカラムをPG起用し、ポイントフォワードであるブランドン・イングラム、ザイオンと合わせて3人でゲームメイクを行っていました。
そこに過去には9アシストを記録したこともあるプレイメーカーのマレーを加えたことで、攻撃全体のバランスは整っていくかもしれません。
で、NOPが次に必ず打つと言われている一手がイングラムのトレードです。チームの重要なスコアラーである彼ですが、ザイオンとの相性がそれほど良いわけではありません。プレーオフではザイオンを欠いていたとはいえ、今季一年を戦ってチームとしてもCJ、イングラム、ザイオンのトリプルエース体制の天井に気付いたと思われます。より安く、契約年数の長いマレーを獲得したのも、ここらで別の「相棒」を探してのことでしょう。
その上で彼の契約は今季まで。今季の契約は36Mですが、彼は大型の契約を狙っており、マレーも抱えた今のNOPでは到底彼が望む契約は渡せません。そんなわけで、放出が既定路線になっているわけです。
前提が長くなりましたが、ようやく本題に入ります。イングラムの放出と合わせて、NOP最大の問題となっているのが、スタメンセンターが不在ということ。
昨季まで先発を務めたヨナス・バランチュナスは、ある程度ならアウトサイドが撃てる(キャリアハイ3PA 2.1と本当に「ある程度」止まりですが)という点でインサイドへのペネトレイトを軸とするザイオンと相性が悪くない選手でしたが、彼はこのオフにWASと契約してしまいました。
そんなわけで、今回はNOPのニーズに合う選手をリストアップします。彼らの現所属チームがサラリーの都合でトレードが難しい場合も取り敢えず載せるだけ載せておきます。そのため大抵の場合はトレードアセットは度外視です。
1.ブルック・ロペス(MIL)
ザイオンに似たプレースタイルのヤニスの横でMILの優勝に貢献した、時代を代表するシューティング・ビッグマン。「スプラッシュ・マウンテン」の異名の由来である外角からのシュートは36歳の昨季も健在で、3PA 5.1で成功率は36.6%と、攻撃面でNOPのニーズに完全に合致します。
さらに、昨季はチームのシステムが崩壊した影響でディフェンシブ・レーティングが落ちましたが、ドリュー・ホリデーという素晴らしいディフェンダーが在籍した僅か2年前には、DPOY投票2位になるなど守備面でもバランスチュナスになかったリムプロテクションをもたらしてくれます。
ハーバート・ジョーンズ、トレイ・マーフィーらを揃えるNOPなら、彼の守備面での貢献にも期待ができます。(もっとも、トレードする場合、彼らのうちの誰かを放出する可能性はあります)
ここまでは彼の能力がフィットする理由を述べてきましたが、次に問題点。
まぁ、単純にMILが放出しないってとこですかね。契約的には今季までの23Mで、今季中に37歳になる彼に新しい契約を渡すのに躊躇して放出する可能性はあります。しかし、ロペスがザイオンにとって希少な相性の良いセンターであるということは、同様にヤニスにとってもロペスは完璧なフィットです。
攻撃面でも守備面でも既にこれ以上ないほどの相性を示しているロペスは、契約が今季までのベテランとはいえ、よほどの対価でないと放出しないのではないでしょうか。一時期放出の話題が出ましたが、最近はフロントが強く否定しています。(普通肯定するわけはないんですけどね)
また、追加の問題点として、MILはセカンドエプロンに抵触しており、3チームトレードにするとしても、それでもなおトレードが難しいチームではあるんですよね。
その点を踏まえて、理想的ではあるけれど、獲得へのハードルが高い選手がロペスです。
2.マイルズ・ターナー(IND)
ロペスらと並び、近年のリーグを代表するストレッチ5がターナーです。キャリアの早い段階から3ptを撃ち、昨季は3PAが4.2本。確率は35.8%とまずまずでした。平均得点は司令塔のタイリース・ハリバートンの移籍以降跳ね上がっており、過去2年で17.5得点と存在感を強めています。
一方、過去に2度のブロック王、キャリアハイ3.4ブロックを記録した守備面では近年やや評価を落とし気味です。とは言え、今回のリストの中では間違いなく上位に入るショットブロッカーです。
契約は今季が最終年で約20M。INDはトレードが難しい状況でもありませんし、金額面では現実的なラインです。
が、ロペス同様、というかロペス以上にIND側に戦力面で放出するメリットがありません。ロペスと違って今季28歳とまだまだ全盛期な上に、チームのスタイルにもかなりフィットしています。
一方で契約面ではネムハード、マッコネルらと契約延長を結んだことでチームのペイロールは来季(特にネムハードの分だけ)跳ね上がります。契約の都合でINDはターナーと契約延長を結べないそうですが、もし来年の夏にターナーがINDの提示した再契約額に不満があればFAで流出する可能性はあります。
今のところはINDはターナーとの関係を楽観視できる状況だとは思いますし、ジャレス・ウォーカーやベネディクト・マサリンのチームオプションを行使するかどうかにもよりますが、ペイロール的にも彼と再契約を結ぶことが非現実的というほどではありません。TDLで急いで放出する可能性は低いと思われます。
NOPからすれば獲得が難しいターゲットにはなりますが、獲得できれば、このリストの中で最も理想的と言えるかもしれません。
3.ニコラ・ブーチェビッチ(CHI)
このオフ、カルーソをトレードで、デローザンをサイン&トレードで放出したCHI。開幕前後に34歳になるブーチェビッチも間違いなく放出対象です。
昨季は18得点10リバウンドを記録。CHI移籍以降は得意のアウトサイドの確率は落ちており、昨季は3PA 4.1と本数はなかなかですが、確率は29.4%と3PAが1を超えてからはキャリアワースト。キャリアを通して34.1%と些か不安な確率ですが、あのサイズである程度撃てるだけでも儲け物です。
守備面ではショットブロッカーのロペスと比べるまでもなく、期待できることは特にありません。サイズ負けしない、それが利点でしょうか。
最後に契約面ですが、きっかり20Mが残り2年。ロペスにさえハーブの放出はやめたほうがいいと思うくらいなので、当然ブーチェに対しては尚更です。となると、彼を獲得する場合はイングラムの放出と絡めて、もしくはイングラム放出後になります。
懸念点はDF面と、外角の確率。あとは年齢でしょうか(あれ?いいとこなくね?)。CHI的にも放出したい選手ですし、同じベテランのロペスよりは遥かに安いアセットで獲得が可能な点は魅力です。
4.ウェンデル・カーターJr.(ORL)
先述のブーチェビッチとのトレードでCHIからORLに移籍したのが、このWCJ。ORL移籍以降にアウトサイドを武器とし始め、24歳の昨季は3PA 3.1で37%。キャリアハイは15得点10.5リバウンドですが、ここ2年は同じフロントコートにインサイドで戦えるフランツ・ワグナー、パオロ・バンケロが加入したことで役割を減らしています。
ロペス、ブーチェビッチらベテランと違い、元ASというわけでもないため、契約は今季12Mで残り年数も2年とかなりお手頃です。
裏を返せばそこが懸念点でもあり、今季25歳とまだ若く、フランツやバンケロと言ったコアメンバーと年齢がそう離れていない、その上相性も悪くないWCJをORLが放出する理由があまりないんですね。
怪我が多いのが難点ではありますが、チーム全体(特にフロントコートのフランツ、バンケロ)が3ptを苦手とする中で、彼のシュート力はかなり重要です。フランツがアウトサイドのスランプから抜け出し、2年前程度に入るようになれば、少し状況も変わりますが。
5.ジョン・コリンズ&ウォーカー・ケスラー(UTA)
少しイレギュラーになりますが、UTAからは2人をピックアップ。
まずはPFをメインポジションとする206cmのコリンズ。WCJと身長は2cmしか変わりませんが、体重が106kgと16kgも軽く、メインのセンターとしては少々物足りません。
リバウンドに関してはキャリアハイ10.1と有用であり、ブロックに関しても平均1ブロック程度とスモールラインナップを軸としたチームなら許容範囲だと思います。
彼の魅力は、やはり外からのシュート力で、昨季は3PA 3.4で37.1%と中々のものです。
契約面では今季が26M、そして来季がプレイヤーオプションで26M。彼を獲得する場合もイングラムを絡めることになります。
この夏マルカネンと、今季中はトレードできない大型契約を結んだ影響で、UTAの将来設計がまるで読めなくなりましたが、いずれにせよコリンズを長期的なコアと見做している可能性は低いです。
次にケスラーについてですが、2年目を終えたばかりで来季23歳の若手センター。NBA入りした時点で卓越したショットブロッカーとしての才能を発揮しており、いずれの年も20分程度のプレータイムで2.6ブロックを記録しています。
上記の通り、非常に若い選手なのでUTAの長期構想において重要なピース…なのかと思いきや、複数回にわたって「UTAはケスラーをトレードアセットに含めることができる」と報道されています。シーズン中からUTAを追っているわけではないので、なぜ彼らがこれほど若く有用な選手を放出対象としているのかは分かりませんが、とにかく彼を獲得できるのであれば、NOPに欠けている、そしてコリンズを補えるリムプロテクターを補強できることになります。
そんな彼の契約は今季が約3M、来季がチームオプションで5M弱と格安です。またUTAはイングラムの契約を引き受けることができる数少ないチームでもあります。彼らがイングラムを求めていて、契約延長を渡すかどうかは不明ですが、理論上はそれが可能なチームです。
先述の通り、UTAがマルカネンをどうするつもりなのかによって、イングラムを獲得するかどうかが分かれます。個人的にはマルカネンとイングラムを中心としたチーム作りなんて無謀な挑戦はしないと思うので、もしこのトレードが起きる場合は「イングラムの契約を引き取ってもらう上に、良いアセットももらう」形となり、NOP側がギャップを埋めるために指名権等のアセットを出すことになると思います。
それでなくてもイングラムのトレード市場での評価は実力に対してすこぶる低いですし、何より相手はUTAのダニー・エインジですので、都合良くイングラムを「価値あるアセット」として売れるとは思わない方が良いと思います。コリンズに関しては昨季評価を持ち直したとは言え、まだ割高な印象のある選手ですが、ケスラーまで獲得しようとすると、流石にNOP側が追加でアセットを出すトレードになる可能性は高いです。
6.ザック・コリンズ(SAS)
昨季、ウェンビーの控えとして活躍したイケメンセンターがザック・コリンズ。4月に肩の手術を受けましたが、今季の開幕には間に合うそうです。
今季27歳を迎える彼は、211cmのビッグマンとしてはそれなりにシュートレンジが広く、シュートの3割ほどを3ptが占めています。ただ確率が良いとは言えず、昨季は22分の出場で3PA 2.6本の32%。2年前には37%を記録していたので、安定感はありませんが期待値はあります。
守備面に関してはスタッツ上ではお世辞にも良いとは言えず、36分換算で0.8スティール、1.2ブロックほど。一方でキャリアを通して36分換算で5ファウルと、ファウルが多いのが難点です。ただリバウンダーとしては、それなりに優秀です。
契約に関しては今季が16M、来季が18MとNOP視点では少し高め。ウェンビーとの相性の都合で放出が噂されるケルドン・ジョンソンの19Mと合わせるとちょうどイングラムの契約とほぼ同額になるため、イングラムの絡んだ3チームトレードで獲得が可能かもしれません。
総じてスペック的にはブーチェビッチと似た部分があり、3ptとDFの期待値は低め。一方でSASが放出する可能性はそれなりで、契約が2年と程よい長さ。年齢的にも丁度良いので、悪くないターゲットだと思います。
7.サンティ・アルダマ(MEM)
今季でNBA入り4年目、24歳を迎えるスペイン人ビッグマン。213cmながらPFを主戦場として年々成長を続け、昨季は主力の相次ぐ故障に伴ってプレータイムを26分まで伸ばしました。
昨季は10.7得点5.8リバウンドとまずまずの活躍で、3PA 5.0はキャリアハイ。確率こそ34.9%とまずまずですが、年齢も考えると期待が持てます。この点ではNOPのニーズにかなりフィットします。
守備に関してはまずまずと言ったところで、当然ロペス、ターナー、ケスラーほどのものはありませんが、今のところ絶望視するほどではないかと思います。(多分)
続いて契約ですが、今季がルーキー契約最終年で4M程度と格安。MEMは彼と契約延長を結んでいないので、このままでは来夏に完全FAとなります。
チーム状況としては今季、控えPFのブランドン・クラークの復帰が見込まれ、更には昨季にGG・ジャクソンがブレークし、アルダマの役割がどうなるかは未確定。クラーク、アルダマのいずれかが放出される可能性はありますが、クラークの契約は年数が長いです。クラークの契約は動かしやすい額ではあるのですが、怪我明けということを踏まえると、彼の契約を3年も引き取ってくれるチームは少なく、年数がネックになります。その点、アルダマの方が動かしやすくはあります。契約額の安さ、ポテンシャル的にそれなりに価値の高いアセットにはなると思いますが。
一方で彼らに欠けているのはNOP同様に先発Cです。しかし、NOPが求めているものとは違い、MEMは屈強なリムプロテクターを求めています。アルダマはビッグマンではありますが、MEMが求める先発C像とはかけ離れているので、彼やジェイク・ララビアと言ったニーズに合わないフォワードのデプスを削ってCを補強する可能性はあると思います。そのトレードに上手く噛むことができればNOPに獲得のチャンスがないということはないです。
総じて今季中に放出の可能性があり、ポテンシャルの高いビッグマン。メインのCを任せるのは不安ですが、彼もまた悪くないターゲットだとは思います。
総評
理想はターナーですが、恐らく厳しいので、一番現実的なラインではチームが積極的に放出を狙っているブーチェビッチあたりになるのでしょうか。ジョン・コリンズが2020年に似たスタッツを残すところを見たい気もします。
また、ザック・コリンズやアルダマのような現在所属しているチームで控えに甘んじている選手が、移籍に伴ってブレークするところも見たいですね。
ザイオンとのプレーエリアの被りを諦めて、ロバート・ウィリアムズ3世(POR)のような純粋なリムプロテクターを獲得する案を推奨しているメディアもありますし、NOPがどの方向に向かうかは未だに不明。
いずれにせよ、今後起こるであろうイングラムのトレードはかなり楽しみです(とか言いつつ数年前のTORとバンブリートの件みたいになりそうな気もしますが)。
それでは今回はここまで。ありがとうございました!
9/12追記:原稿段階ではアイザイア・スチュワート(DET)について記載していましたが、ここに書き写すにあたり完全に失念していました。サイズは不足していますが、個人的にはかなりアリだと思います。が、DETが放出するかわかりませんね。個人的にはデュレンとのフィジカルなコンビが好きなので、このままDETで見たいです。